秘密の地図を描こう

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「俺たちの軍籍はどうなっているんだ?」
 ネオが不意にこう問いかけてくる。
「どう、と言いますと?」
 いつものように食事を運んできたキラは、彼の言葉の意味がわからずにそう聞き返す。
「まだ、生きていることになっているのか?」
 それとも、とネオは言葉を重ねた。その疑問に何と言葉を返せばいいのだろうか。そう思って今日同行してくれているバルトフェルドへ視線を向ける。
「お前さんはMIAだ」
 そうすれば、彼は冷静な口調でそう告げた。
「そっちの坊主達に関しては、登録抹消、だそうだが?」
 意味がわからないが、と彼は続ける。
「そうか……まぁ、そんなところだろうな」
 連中のやりそうなことだ、とネオは笑う。
「所詮、俺たちは使い捨ての道具ってことだな」
 そういうもんだろう、と彼は続けた。
「なら、これ以上義理立てしても意味はないな」
 こちらの方が自分達のことを考えてくれているし、と彼はため息をつく。
「連中にしてみれば、一番潤沢に使える材料が《人間》だったってことだ」
 放っておいても手に入るからな、と彼は続ける。
「あの子達は、戦災孤児だった、と言うことか」
 そして、地球軍関係の施設に収容された。そのときに、何かの特性を見いだされてブルーコスモスが人体実験につかったと言うことだろう。ラウはそう判断する。
「そう言うことだ」
 戦争が長引けば長引くほど、連中は優秀な人材を手に入れられると言うことだ……とネオは言う。
「……しかし、ブルーコスモスはほぼ壊滅状態だが?」
 何ができるというのか、とバルトフェルドが問いかける。
「月の裏側にビーム砲を建造中だ、と聞いたがな」
 どのようなものかまで走らないが、と彼は続けた。その瞬間、ラウの脳裏にミゲル達の会話が思い浮かぶ。おそらく、バルトフェルドも同じだろう。
「……そうか」
 確かに、厄介だな……と彼はそのような気持ちをおくびにも出さず口にする。
「それで? 教えてくれた見返りに何を望むんだ?」
 彼はそう続けた。
「あいつらの身辺保護、だ」
 もう二度と実験材料にされない、と確約してほしい。彼はそう言いながら二人を見つめてきた。
「とりあえず、カガリには伝えておこう」
 自分達の独断で決めることはできない。バルトフェルドはそう言う。
「それは当然だな」
 ネオはそう言ってうなずく。
「まぁ、この艦の中では心配いらないがな」
 中心人物三人が彼らを気に入っているから大丈夫だろう。バルトフェルドはそう言って笑う。
「今のところは、それで十分だな」
 少なくとも、自分にとっては……とネオはうなずく。
「それで……君はどうするつもりかね?」
 ラウは彼にそう問いかけた。
「……それこそ、そちらの指示に従う、としか言えないな」
 自分はあくまでも捕虜だからな、と彼は続ける。
「でも、さすがに『死ね』と言われたら困るな」
 家の連中のこともあるから、と彼は言う。
「わかった。それも考慮に入れておこう。今しばらくは現状維持だな」
 おとなしくしていろ、とラウは口にする。
「こちらとしても、それだけに関わっているわけではないのでね」
「それもわかっているつもりだ」
 ネオはそう言ってうなずく。そんな彼の仕草の中に、無意識に《ムウ・ラ・フラガ》の影を探してしまうのは、おそらく、自分が彼にこだわりを持っているからだろう。
 本当に、厄介なものだ。
 ラウはそんな自分の行動に対し、そう結論づけた。


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最遊釈厄伝